蜂蜜の物語

蜂蜜は単に蜂が集めた花の蜜と思っていませんか? 確かに蜂が集めた花の蜜には違いないのですが、花の蜜が蜂の体内に取り込まれて、加工されたものなのです。 花の蜜は「しょ糖」ですが、これが「果糖」と「ブドウ糖」に変換され、濃縮されたものなのです。 ロイヤルゼリーやプロポリスはさらに高度の加工品です。 その意味で、蜂は1匹ずつが食品工場で、かつ「ママ友ファーム戸隠」の従業員です。 最初は従業員約2万匹から始めました。 2万匹の工場のCEOである女王蜂はこの中でただ1匹です。 女王蜂は1日に約2000個の卵を産みます。 春になって花が咲くと蜂はどんどん増殖し、そのうち新しい女王蜂が誕生します。 女王蜂は王台と言われる特別の巣房で、ロイヤルゼリーをふんだんに与えられて育てられます。 通常王台は複数個作られますが、1つの巣には1匹の女王蜂ですから、最初にふ化した女王蜂は残りの王台を破壊して自分一人が女王として君臨します。 それでは新しい女王の親であった女王蜂はどうなるのでしょうか? 実は前女王は自分の側近を引き連れて、巣を出て、外に新しい巣を作ります。 これを分蜂と呼びます。 こうして世代交代が進められます。 (老人がいつまでも権力にしがみつく人間界とは異なり、老人が若年者に巣を譲って世帯交代が行われます) 養蜂業では分蜂が起こると蜂が外へ飛び出し減少してしまうので、常に巣箱の中を観察して王台を取り除くようにしています。 また蜂群(巣箱)を増やす場合には、王台のある巣脾(すひ :巣箱の中で蜜や卵を蓄えるハニカム状の蝋を桟に張り付けたもの)と王台のない巣脾、いずれも働き蜂が沢山群がっているものを別の巣箱にいれ、そこで女王蜂をふ化させて増やします。 生まれたばかりの女王蜂は巣外に飛び出し、雄蜂と交尾します。 これを受胎飛行と呼びます。 その後、女王蜂はセッセと卵を産み続けます。 蜂蜜は花の種類によって、アカシア蜜とか、蓮華蜜とか、菜の花蜜とかがあります。 丁度 日本酒が銘柄によって味が異なるのと似ています。 最初にとれた蜂蜜を友人に送った際、それぞれ どのように味が違うのか、聞かれました。 味を言葉で表現するのは難しい。 自分で賞味して確かめてもらうほかありません。 また蜂は花を限定して蜜を集めている訳ではなく、巣箱の周辺2キロの範囲に渡って咲いている花から蜜を集めます。 あたり一面白い蕎麦の花が咲いていても、近くに栗の花が咲いていれば、栗からも蜜を集めてきます。 従って純粋に1種類の花の蜜というのは外界から閉ざされた温室内の花の蜜など、特殊なもの以外はなく、多かれ少なかれ色々な蜜が混ざっているものです。 ですから同じく「蕎麦蜜」と言っても、産地や採蜜された時期によって微妙に味が異なります。 その違いを分かる人がどれほどいるかは分かりませんが・・・ ちなみに私は味音痴の方ですから、そばとリンゴの違いは分かるとしても、何がどの程度混ざっているかなどは 全く分かりません。